2023/9/22

9/15-18で旅行に行って3日目に広島の「シネマ尾道」で『ローマの休日』の4Kリマスター版を観た。はじめて旅行中に地方の映画館で映画を観た。『ローマの休日』も初見。天井が高くてスクリーンの前にピアノが常設されててすごかった。スクリーンもかなり高い位置にあった。老夫婦数組と、中学生くらいの子どもの3人家族がいた。『ローマの休日』、常にありえない照明の当たり方してるし顔があまりにも可愛いし4Kなのもあってかずっと紙芝居みたいな、何とも接続されてない世界という感じでぺらぺらしてて面白かった。オードリーがあんなにぎゃーぎゃー騒ぐ役だとは知らなかった。たぶん帰り際、支配人の清順さん(由来はもちろん鈴木清順というすごい名付けられ方)がいた。『オオカミの家』のポスターも貼ってあった。今回の旅行は予備パジャマとして会社でもらったオオカミの家Tシャツを持っていった。尾道に行く前の日、ホテルで『東京物語』を途中まで見た。今までなぜか途中までしか見たことなくて今回も途中までしか見れなかった。小津久しぶりに見ると面白すぎて感動する。本当にめっちゃくちゃ面白い。ふつうに面白くてみんな見やすいから人気なんだなと思う。尾道は1回行ったことあったけど前回とは印象が全然違くて、なんか海が狭く見えたし人が住んでる感じがした。街もコンパクトで、観光地とはいえそんなせまい街にいくつも本屋があって映画館があるというのはすごいことだと思った。同じ港町でもカルチャーのない町(静岡県自体がわりとそう)に育ってしまったから羨ましい。地元がロケ地になった映画とかも聞いたことがない。

昨日はいつもより早めに帰れたから上司がイ・チャンドン特集上映で久しぶりにみてもうそれのことしか考えられなくなったと言ってた『ペパーミント・キャンディー』を観た。ランチから帰るときに、「午後もペパーミントキャンディーについて考えるか…」と言ってた。めっちゃよかった。2000年前後韓国映画がすごいすごいと言われ始めた頃の作品もっと観たい。光州事件で目撃したこと、つまり韓国の兵役制度が花をカメラにおさめることが夢だった男の人生を狂わせて壊したのであって、途中まではこの男の暴力性は個人に由来するものだから「俺の人生を台無しにしたやつ」は俺自信だろと思ってたけどそうではなく、国の制度によって目撃させられたことがひとりの人生、そのひとりにとって世界のすべてを変えてしまうという悲しさ。それでも良くも悪くも時間は巻き戻せないということ、そして台無しな人生なんてないということが時間を簡単に操れる映画によって、しかも回想のかたちで示されるのがめっちゃすごい。15年ぶりくらいに再会した、病で死ぬ直前の初恋相手から受け取ったカメラのフィルムを広げて号泣するシーンのアングルと空の色が完璧だった。(産まれてからずっと不景気というのもあるけど)戻りたい過去がないというのは幸せなことなのか。なんか本当に時間は前にしか進めなくてよかったなと思う。ロケーションとか家の感じもめっちゃよくて『ペパーミント・キャンディー聖地巡礼したい。

少し前に観た『aftersun』も回想映画だった。けどどっちも一人称じゃなくて誰が何をしたか、そこに何があったかだけが示されていくタイプの作品でそれがよかったし死の先を想像させるような広がりとか豊かさがあって感動した。死生観のパターンが1こ増えた。

『HEART STOPPER』シーズン2第5話が泣けた。これができたら本当にいいだろうなと思った。摂食障害のチャーリーがその理由として「食事だけは自分でコントロールできるものだから」と吐露するシーンがあってなるほどなと思った。何も思い通りにいかない世界で唯一今すぐに簡単に制限できるものはたしかに食事かもしれない。過去に支配的な態度をとってチャーリーを傷つけた元彼に対して、決して許さず徹底して厳しい態度を取り続けてるのは偉いことだ。なんとなくヨーロッパ的な感じがする。アメリカのドラマだったら反省してる様子のそいつは何かしらで許されてると思う。でもだとしたらそいつは(大抵の人間が元彼側だと思う)一度した誤ちに向き合い続けながら生きることになる、辛い人生だ。大人が見るには少し辛いドラマ。