2023/7/10

今年も4、5月にシャンタル・アケルマン特集をやってたから、去年やってなかった5本くらいをヒュートラとアンスティチュフランセでみた。今年はアケルマン論を書くぞと思って宣言したけど全然できそうにない。

『一晩中』 前にYouTubeでみて以来、映画館で観るのは初めて。待つ人主体の物語だけど緩慢な感じが全然無い。みんな焦ってて歩くスピードも速いし感情が常にピークに達していてよかった。よく考えると普段から落ち着いて待っている時間なんてなくて何かを待つ時は大抵それが来るのを今か今かと待ち構えてる状態。本当に訪れるかもわからないのに前のめりで待ちたい、今本当に望むものへの熱量の高さが熱帯夜とよくあってる。わかるわかるの連続。

『News from home』 離れて住む心配性の母から届く手紙を読み上げるアケルマンの声とニューヨークの風景が重なって、街を走る車と往来する人々、駅のホームに立つ人々がひたすらに映されてるだけなのに面白くて本当にすごい。ニューヨーク行ってみたい。ひたすら想われることのしんどさ、みたいなことを考えた。あとこんな実験的な映画を作ってみようというアケルマンの自信とか真剣さが伝わってかっこいい。これを表すにはこのやり方が最適だという確信みたいな。

『ゴールデンエイティーズ』 画が楽しいのはもちろん、キラーフレーズ連発でおもしろかった。「女の幸せは広告が作り出したもの」「負け顔できる人が大人の男」「無駄な愛なんてない 人生はすべてよくなっていく じゃなきゃ地球が滅亡する」とかうろ覚えだけど全部に対して「そうだよね泣」という気持ちで観てた。衣装もめっちゃかわいい。ただラスト以外全てセット撮影のミュージカルだから『囚われた女』とか『アンナの出会い』とかにあるああいう感動はない。人生における期待と恋と絶望がぎゅっとなってる。デルフィーヌ・セイリグさんの聖なる母感がすごい。ついていきたくなる気持ちわかる。

周りがどうとかじゃなく自分にとっての幸せとか心から望むものをわかってるのってすごい状態だと思う。それで心がボロボロになったり何か損したり果たせなかったりしたとしても、自分の望みがわからないよりはマシ。←これを常にリマインド……