2022/8/7

映画を観るとき全然集中できていなくて、人よりも内容を覚えていないということが最近わかった。今日はロミー・シュナイダー特集の『太陽が知っている』を観に行ったけど、所々寝てしまってそこが重要なシーンだったような気がする。ミシェル・ルグランのおかげで音楽がよかった。メインの4人が映画俳優顔すぎて、それ以上の印象や感想がない。明らかにおかしい日本的な置物や箸でお米を食べるシーンがあって、これが異化効果なのかもわからないけど、だとしたらアラン・ドロンロミー・シュナイダーのビジュアルだけで十分非日常的だと思った。

6月、アテネフランセでマルセル・アヌーンの『秋』と『夏』を観た。『秋』で、"Anne"それ自体の言葉の響きが甘いから、"Je t'aime Anne."と言ってしまうのは過剰だ(記憶が曖昧)という趣旨のセリフがあって面白かった。詩的なセリフ。「映画を観ることについて」がひとつ大きなテーマとしてあったから、今ここでスクリーンを見つめている観客について考えざるを得なかったけど、スクリーンの中では十分フィクショナルなドラマも起きていてハッとしたり。『夏』については、女好きだなーという印象。実験的な編集は、それ以前に『勝手にしやがれ』や『はなればなれに』が公開されていたと考えると、そう新しいものにも思えなかった。

ヴェンダースのBOXが発売になって、『ベルリン・天使の詩』と『さすらい』を観た。『ベルリン・天使の詩』の、ライブハウスのバーに女がやってくるところからの照明がすごい。男が女と結ばれたと感じる時、女の顔は見えなくて、やはり男の映画だった。『まわり道』も中年男性のロードムービーで、勝手にヴェンダースの人生論的なイメージで観た。映像が面白いので、退屈はしない。彼らが2つ目の宿に着いたところで、窓に映る人々とテレビ画面と部屋の中の少女がワンフレームに収まっていて、そういう複雑さとただ人が加わったり離脱したりするシンプルな関係が共存しているのが、ヴェンダースの良さかとなんとなく理解した。

トリュフォー特集から、『家庭』と『アデルの恋の物語』。どちらもトリュフォーの物語がとにかく嬉しい。アデルの狂った様子がシリアスというよりはコメディーに見えたり、宿舎のおばあちゃんみたいな、心配の気持ちでアデルを見てしまったりする感じは、トリュフォーの登場人物への愛情ゆえだと思う。

7月、公開2日目に『リコリス・ピザ』。HAIM好きとして結構前から楽しみにしてた。オープニング、アラナが外廊下をダルそうに歩いているところにゲイリーが合流して、デートの約束を取り付けるまでの長回しが輝きすぎて泣きそうになったけど、そこがピーク。随所にPTAの緻密さが見えて、とにかく雑な感じが一切無い。ただ、アラナの動きとフレームがシンクロする感じを楽しむなら、HAIMのMVで十分かもしれない。トラックのシーンとかはいい感じ。

同時期に話題になってた、というかTLでAIにおすすめされまくっていた『わたしは最悪』も観た。色々と中途半端な感じだった。「わたしは最悪」的な描写を、冒頭のタバコのシーンや夕日を見ながら泣くシーン、朝帰りのシーンで担保してるのだとしたら、画が弱い。その辺も喋らせればよかったと思う。矛盾を抱えながら生きていく的なテーマはグレタ・ガーヴィグがもっと魅力的な映像でやってくれるのでおっけー。

『WANDA』も絶賛されていたけど、悲しくなってしまいイマイチだった。1970年に公開されて、当時アメリカンニューシネマが盛り上がっていた時代だということを考えれば、めちゃくちゃすごいと思う。こんな女性の物語があるということだけですごい。けど、何もできなかったワンダ(何もできなくない)が銀行強盗に加担して、男に「やればできるじゃん」と言われて微笑む、みたいなのは、さすがに2022年だしどう見ればいいのかわからない。イメフォと自分の相性があんまり良くない気もする。

家で見たのでよかったのは、ヴィスコンティの『山猫』。冒頭から美しすぎて泣けた。鏡の中の健康的で輝かしいアラン・ドロンは、やがて額に汗を垂らし涙を流す初老男性に成り果てる。イタリア人の白っぽい汗、映画的でほんとに泣ける。かっこいい。

U-NEXTで大雨の日にジョン・カーペンター2本。『クリスティーン』はギルモア・ガールズの大事なシーンで引用されるからずっと観たくてようやく観た。めっちゃ面白い!気分とぴったり合って嬉しかった。いきすぎた嫉妬、情念も車が体現することでなんか可愛く思える。五社英雄的な女の情念はかっこよさとか悲しさに引っ張られていく感じがあるけど、クリスティーンは可愛い。『ゼイリブ』はまんま今の日本だった。なんなら環境に配慮しているフリ、ジェンダー平等に向かっているフリなどが乗っかっているから現代日本の方がよっぽど厄介。全員まともになったらあれくらい喧嘩して当然だろう。西海岸の風景が嬉しい。あのエイリアン(?)の見た目とか主題とかなんとなく坂本慎太郎的なものと重なる。

つい2ヶ月前に自分で書いた『アンナの出会い』についての感想に励まされた。そんなことがあるんだと思った。暗い気持ちではなくて日々どっちでも無さすぎる。